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航空集配サービス設立45周年特集

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航空集配サービス設立45周年特集
サービスメニュー拡充で安定的成長を目指す

堀越大吉郎社長関空で新設したKIX-Coolexpニュース

 2015年で設立45周年を迎えた航空集配サービス(本社=千葉県習志野市、堀越大吉郎社長)は意欲的に業容を拡大している。サービスメニューを充実させることで安定した経営基盤を構築し、持続的な成長を目指す。主力の生鮮貨物業務では従来、輸入が大半だったが近年は輸出の拡大に取り組み、関西国際空港では専用の上屋を開設。また、海外向けの日本食材の輸出販売にも乗り出している。生鮮以外でも、昨年から航空貨物チャーター会社の総販売代理店(GSA)業務を開始。一般貨物のオペレーション業務でも、拡販を強化して顧客層の拡大を図っている。同社の取り組みを追った。(戸田圭彦)

GSA、生鮮で新展開

同社は昨年度、兄弟会社で人材派遣業を営むKSプレミアムスタッフと合わせ、初めてグループ年商100億円を突破。昨年後半から開始したGSA事業が北米向けの特需とうまく合致し、事業から早々にチャーターを数件扱って大きく増収。従来から取り組んでいる顧客層の拡大も寄与したほか、昨今の人材不足が追い風となりKSプレミアムの業績も向上した。  GSA事業については、上海を中心にGSA事業を展開しているBSTロジスティクスの日本地区GSAとして昨年12月に本格的に営業を開始。BSTはいわゆる「ヴァーチャル・エアライン」。機材は保有していないが、GSAを受託する航空会社の貨物スペース販売を通じ、世界各地へネットワークを構築している。中国から米国、欧州を回る世界一周ルートの貨物スペース販売も行っている。

今期の業績も増収基調で推移している。新規顧客の獲得が進んでいることもあるが、マーケットに停滞感はあるものの、成田の生鮮の輸入が堅調。マグロなどの品目で改善が見られている。関西の輸入は引き続き苦戦しているが、輸出への取り組みがカバーしている。人材派遣も引き続き需要が旺盛で、当面はバックオーダーがたまっている状況という。

GSA事業を除く航空集配の事業セグメントは、大きく分けて、生鮮貨物、引っ越し、一般貨物の三つ。売り上げの内訳は、生鮮貨物が5割強、残りを引っ越しと一般貨物が分ける。構成バランスは取れているが顧客層も幅広く、健全なポートフォリオを構築している。しかし、堀越社長は「業界変化への対応、経済全体のリスクを考えると、さらなるメニューの拡大が重要」と話す。

堅固な事業基盤の構築に向けて、まずは生鮮の強化を図っている。輸入業務が中心だった同事業で、輸出の拡大に取り組む。直近では8月末、関空内の貨物地区に温度管理機能を備えた輸出上屋「KIX-Coolexp(キックス・クーレックス)」を開設。日本政府が日本の農水産物・食品の輸出促進に取り組んでいるほか、関西地域では関空活用の一環として生鮮食品の輸出拡大策が着実に進展している。生鮮輸入で培ったノウハウを輸出にも生かしていく方針を決めた。同社は既に同貨物地区内で生鮮上屋を運営していたが、輸出専用上屋を設けることで、より柔軟に需要に対応できるようになった。

新施設の面積は約3700平方メートル(庇下含む)。うち定温庫は約1500平方メートルで、三つの温度帯に対応している。生鮮食品のほか、医薬品関連貨物、精密機械や一般貨物も取り扱う。

商社機能設け 海外拡販図る

興味深いのは生鮮品の輸送インフラの強化と並行して、同社が商社機能を有し、海外向けに日本食材を輸出販売する業務を開始している点だ。まずは日本酒から開始しており、昨年に酒販売免許を取得。上海の食品輸入会社を通して、現地の日本料理店向けに輸出している。現在は、鮮魚や各種生鮮・食品をパッケージ化して輸出するサービス、また他国・他地域への輸出拡大に向けた検討を進めている。

メニューの拡大に合わせて、営業力も強化している。今夏に、東京オフィス(東京・中央区)を開設。同事務所は生鮮営業本部、ロジスティクス営業本部、貿易事業部、加えてKSプレミアムの都心における営業拠点として機能している。各事業部門のスタッフを配置し、共同営業など連携を強化することによる相乗効果を目指す。生鮮営業本部の定温・保冷物流ノウハウ、ロジスティクス営業本部の保税貨物取り扱いノウハウなどを組み合わせた新たなサービスの構築に関しても、これまで以上に迅速に進める考えだ。

現在、生鮮営業本部やロジスティクス営業本部は成田空港外に物流施設とともに営業拠点を構えるが、東京オフィスの開設で、都内での営業により厚みを持たせる。緊急を要する案件などにも、より迅速・柔軟に対応が可能となる。生鮮貨物に関しては、市場関係者にも直接アプローチでき、ドライカーゴについてはフォワーダー本社へのアクセスが良好となるなど、これまで以上に顧客に密着した営業展開が可能となった。

同社はまた、現在、都内で海上貨物にも対応した物流施設展開を検討している。航空貨物対応、ロジスティクス対応を絡ませた総合物流施設として機能させることを計画している。都心を中心とした、さまざまな顧客ニーズへのワンストップ対応を強化する方針だ。

食品の輸出や商社機能については、地方の生産者への営業も重要となってくるが、ここはまずパートナーと連携し、北海道や九州産の農水産物の取り扱いを拡大していくとする。加えて、定期的な営業周りを実行していくため、近く組織的に営業体制を整える計画だ。

〈堀越大吉郎社長に聞く〉
運送会社のプレゼンス強化へ

――航空貨物の市況変化に対して。

堀越:海上貨物の技術的な進歩はわれわれの想像を超えており、モードとしての航空貨物の役割は縮小している。スピードは抜きんでているため、選択肢としては残るだろうが、荷主が積極的に航空を使うかと言えばそうではないだろう。当社としても物流の中で、できないこと、ただし書きを減らしていくことが重要だと考えている。

大手フォワーダーでも日本での投資を縮小しており、それは当社にとってもチャンスにはなる。機能をアウトソースするような問い合わせというのは増えているのは確かだ。ただ、フォワーダーだけの商売では立ち行かなくなるとも感じている。そこはしっかりやりながら、加えて違う事業を作るというのが、極めてシンプルな考え方だと思う。

――その意味では、GSAの開始など、積極的な展開が見られる。

堀越:陸送事業を中心に展開していて、自分たちでGSAをやるという発想はなかったが、持ち込んでくれた人間がいたので、せっかくなのでやってみようとの話になった。たまたま特需のタイミングと重なって運が良かったと思う。ただ、実際にオペレーションも含め、一通り経験できたということは非常に大きい。確定はしていないが、新しいチャーター案件もいくつかある。

――新しい取り組みでは、日本酒の輸出も始めている。

堀越:これも中国側で良いパートナーが見つかったことが大きい。彼らのやる気も感じており、非常に面白い展開だと思う。日本酒にとどまらず、中国やアジア向けの商材を、それこそ、品書きを増やしていきたい。まずは販路の開拓をパートナーと進めていく。

生鮮は輸入で実績があるので、商社や市場との付き合いがあり、その先には生産者がいる。関空にもスペックの高い施設を整備しており、そこを売り込みながら、販売と物流をセットにすれば生産者にもメリットが出せるはずだ。商社機能として拡充させていきたい。地方の協力会社と連携しながら可能性を模索していく。

――海外進出の考えはあるか。

堀越:日本のビジネスをそのまま持っていく、つまり実運送をやるというは現実的ではない。あるとすれば、商社機能を大きくして、営業拠点として展開していくということだろう。

――日本の市況変化に話を戻して、成田と羽田の二つのゲートウエーをどう利用していくのかというのも課題だ。

堀越 羽田利用の要求はある。欧米路線などのネットワークも増えている。しかし、当社の中核である生鮮に関して言えば、それほど大量の貨物が到着する訳ではない。成田と羽田ではコストも大きく変わってくる。大きな拠点を構えるという考えは無い。

では成田だけで良いのかと言うとそうではない。航空需要が落ち込んでいく中、今後成田にどれだけ投資していくかは、私も非常に判断に迷うところだ。当社としては、国内の消費に目を向けて、航空から国内の食品輸送だとか、マーケットにつなげられるようなネットワークを整備したいと考えている。成田は日本の玄関であり、今後も重要なことは間違いないが、将来的にはサテライトとして機能するかもしれない。

消費市場にもアプローチ

――消費を意識した物流網の構築ということか。

堀越:成田からみた視線の先は、そういうところかなと思う。現在の仕事も基本的には市場への配送が多いが、大手スーパーのデポへの配送など市場外流通も増えている。そこには大きな可能性を感じている。量販店向けのサービスも拡充したいと考えている。そこは自社車両を増強させてきっちりやっていきたい。

――海上貨物の強化はどうか。

堀越:増えてはいるが、まだできる機能は足りていない。ただ、ボリュームを考えると海上の強化は必要だろう。検討段階だが、都内に海上貨物も対応できる拠点を開設する考えもある。ただ、仕事がないと厳しい。年内には結論を出す予定だ。

――営業強化策を教えてほしい。

堀越:外資系の物流会社への営業強化は数年前から取り組んでいる。取引も増加傾向にある。彼らは日系の物流会社ではなかなか取れない案件を持っているが、自前でインフラを持つことは少ない。そこでの、インフラ、機動力、ヒトの手、というところで要求事項は多い。グループには人材派遣の会社もあり、セット対応できるのは強みとなる。外資企業への対応は手厚くしていきたい。

――今後の将来、50周年に向けて、描ける会社のビジョンは。

堀越:先ほど話した商社機能は、大黒柱とまではいかないが、市場で認知されるようにはなっていたい。食品の輸出も、ある程度のシェアは持たなければならないと考えている。生鮮は今まで輸入で、イコールイメージを持ってもらえていたと思うが、輸出についてもそうした状態まで持っていく。そのためにはできることを増やし、領域を拡大していく。5年後には海外に営業拠点を設けていたい。
それと並行して、運送会社としてのプレゼンス強化を図る。これまで自社車両の数は政策的に抑制させてきたが、今後はM&Aを含め、規模を拡大したいと考えている。人材不足の問題もあり、自前でコントロールできる運送機能は拡充していく。

――現在、年商100億円規模だが、売り上げの目標は。

堀越:2、3年の間で50億円の増収を目指す。ただ、現状の延長では難しい。新たに始めたGSAや、対中トレード、そこに期待している。一攫千金のようなことは考えていないが、軌道に乗れば飛躍的な成長が可能だろう。
M&Aも一つの方法だ。前々から検討はしている。当社は都内にネットワークを持っておらず、補完できるような案件があれば積極的に考えたい。戦略的アライアンスや、資本提携の方が現実的かもしれないが、持分法でそれなりの立場になるようなかたちのシェアは欲しいとは思っている。(文中敬称略)