Daily Cargo 2025年2月27日掲載 成田でGDP取得、医薬物流さらに強化
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成田でGDP取得、医薬物流さらに強化
航空集配サービスは成田空港近郊に構える「成田ロジスティクス支店」(千葉県山武郡芝山町)の医薬品専用施設「NRT-KMedical」(以下、Kメディカル)と「KCOLD1」で、GDP(医薬品の適正流通基準)認証を1月5日付で取得した。監査会社はSGS。両施設ともGDP準拠の高品質な施設として運用していたが、改めて認証を取得し、施設スペック、作業・プロセスともに高品質かつ安全な医薬品の取り扱いが可能なことが担保された。認証取得を機に、さらなる医薬品の需要取り込みを図っていく方針だ。近く、医薬品対応の自社車両も導入を控えている。
品質アピールで取り込み拡大
今回、認証を取得したKメディカルは2023年11月の開設。航空集配サービスでは同施設開設当初から、同施設でのGDP認証取得を視野に入れていた。施設が本格稼働した春頃、堀越大吉郎代表取締役社長、片岡正宏東日本営業本部長兼成田ロジスティクス支店長、川嶋健善品質管理室長に加え、成田ロジスティクス支店の担当者でプロジェクトを立ち上げ、GDP認証取得に向けて動き出した。夏場の温度マッピングの実施や、SOP(標準作業手順書)の作成、組織としての運営体制の文書化を行うなど、準備を進めていった。
Kメディカル、KCOLD1ともにGDP準拠の施設で、IATAの医薬品品質認証「CEIVファーマ」を取得する物流企業から指定倉庫として選定されるなど、高品質なサービスを提供していたが、今回改めてGDP認証を取得したのには、より医薬品への注力と品質をアピールするとともに、顧客メリットを考えてのことだという。医薬品の物流では、倉庫や設備、機器、また作業プロセスなど、細部までのバリデーション(妥当性評価)が求められることも多い。認証を取得していることで、一定の基準をクリアしていることが証明されるため、バリデーションの作業を一部省略するなど、オペレーション開始やスキームの切り替え時において立ち上げのリードタイムが短縮できるようになる。また、取得に向けて温度管理のムラなどの洗い出し、手順書の作成によるサプライヤー管理の高度化などを進めたことで、副次的な効果もあったという。
自社車両で医薬品の集配開始
認証取得を契機に、さらなる取り扱いの拡大に取り組んでいく。サービス拡充の目玉として今後予定しているのが、自社車両による医薬品の集配サービスの開始だ。コンプライアンスや品質に対する製薬業界での意識の高まりから、年々、輸配送と保管・荷役を一気通貫で実施してほしいというニーズが増えており、新規サービスとして数年前から計画していた。このほど、同社初の医薬品専用車両として10トン車を1台導入した。バリデーションを実施した後、今春を目処に提供開始する予定だ。
まずは、案件ベースで運用し、輸入貨物の空港からの引き取りや輸出貨物の引き取りで実績を積み、大学や研究機関、病院など向けのホワイトグローブサービスへの展開も検討していきたいとの考え。台数についても、他拠点の車両の改修により2トン車、4トン車の導入も計画しており、需要を見極めながらさらなる車両の拡大も進めていくという。
Kメディカルは成田地区として最大規模の医薬品専用施設で、最新鋭の高機能倉庫となっている。冷凍・冷蔵・定温対応の5室(冷凍1、冷蔵2、定温2)と、冷蔵、定温庫には急激な温度変化を防ぐための前室があり、計7室の構成。総面積は約1950平方メートル。従来の医薬品専用施設であるKCOLD1と合わせて約2500平方メートルの規模となる。
温度管理の面では空調設備とエアー搬送ファンを室内に満遍なく配置して、空気を循環させることで温度ムラを解消させているほか、冷蔵、定温の前室にはそれぞれ、トラック後部を直接ドックインできるエアシェルターを整備しており、外気に触れることなく貨物の搬出入が可能。冷凍含め各保管エリアへのフォークリフト入室も可能な仕様とし、各温度帯の貨物を出庫直前まで蔵置できる。また、入り口に左右両側から平面的に送風し、外気流入や塵芥、虫の侵入を防止するエアフェンスを設置し、極力内部温度や衛生環境を維持する設計としている。セキュリティ面でも入退室管理システムを新たに導入。担当者以外は施設を開閉できない作りとなっている。倉庫内各所には200ボルトの電源を計23基設置。各温度帯内でアクティブコンテナの取り扱いが可能だ。
品質管理の面でも、計測器メーカーのヴァイサラ社のモニタリングシステムを採用し、リアルタイムでの温度・湿度のモニタリング、データ取得も行っている。同システムは電子記録・電子署名に関する規則Part11に対応し、GxP(各種医薬関連法規制・基準)に準拠した文章作成が行えるほか、データ改ざんが不可となっており、コンプライアンス面にも優れる。また、温度計測のロガーの校正も庫内で実施できるため、ダウンタイムを削減できる。
新施設稼働で海上輸送案件も
直近の成田ロジスティクス支店における医薬品の取り扱いは、Kメディカルの稼働に伴い、以前の倍以上に大きく増えている。直接の顧客は全てフォワーダーなど物流企業だが、荷主からの指定があってフォワーダーが新規で依頼するケースも増えているという。
海上コンテナが扱えることも取扱量の増加の一因となっている。こちらもコンプライアンス意識の高まりから、従来、常温で保管・荷役していたものを、温度管理環境下で実施してほしいとのニーズが増えている。Kメディカルでは海上コンテナをそのままドックインしてコンテナ後部から積付・荷卸できるため、顧客からの評価を得ている。こうした機能もアピールしていくことで、フォワーダーの医薬品の取り扱い拡大にも貢献していく。
同社では関西エリアや中部エリアでも、医薬品の取り扱い強化を進めていくとの意向だ。成田での実績や知見を生かし、高度な物流サービスが求められる医薬品の取り扱いに向けて、拠点間の連携も強化しているという。
写真キャプション
GDP取得プロジェクトに携わった成田ロジスティクス支店の担当者。(左から)佐藤佑樹副支店長、木下佳奈主査、小熊高弘課長代理
医薬品専用車両を初めて導入する