「物流」ができること、「物流」にできること
航空集配サービスは医薬品専用車両を活用し、輸配送から保管・荷役までを自社で手掛ける一気通貫のサービスを展開している。近年医薬品の一貫輸送ニーズが高まっていることから、その対応で新規サービスとして今春に開始。需要に応じて台数の追加も視野に入れており、継続してサービス拡充に取り組んでいく考えだ。
医薬品専用車両は、成田空港近郊の空港南部工業団地に構える「成田ロジスティクス支店」で4月に導入。10トン車で、断熱性の高い車体を採用するなど輸送中の温度管理の安定性を重視した設計としている。現在は主に輸出入貨物の輸配送で稼働しており、これまで協力会社に委託していた医薬品の輸配送サービスの一部を自社に切り替えるかたちで運用している。今後の需要を見極め、小回りの利く2トン車や4トン車の医薬品専用車両の追加導入も検討。保有車両を医薬品専用に改修して、台数を増やしていく。
将来的には、医薬品専用車両のGDP(医薬品の適正流通基準)認証取得も目指す。すでにGDP認証を取得している医薬品専用施設と合わせて、輸送と保管の両面で品質の高さをアピールし、一貫輸送サービスの取り込みを拡大させていく狙いだ。車両と施設のGDP認証をどちらも取得している事業者は少なく、より高いサービス品質を求める顧客への訴求材料となることを見込んでいる。
施設のGDP認証については、同社が成田地区に構えている医薬品専用施設「NRT-KMedical(以下、KMedical)」と「KCOLD」で、1月に取得。もともと両施設ではGDP準拠のサービスを提供していたが、認証取得により改めて施設スペックや作業・プロセスの品質が担保されたかたちとなる。医薬品の取り扱いへの注力姿勢や品質の高さのアピールに加えて、顧客の信頼性が高まったことでKMedicalとKCOLDの一体運用が容易になり、両施設間での貨物の融通が利くようになるなど対応力向上につながる効果もあったという。
KMedicalは2023年11月に開設した最新鋭の高機能倉庫で、成田地区では最大規模の医薬品専用施設となっている。冷凍・冷蔵・定温対応の5室(冷凍1、冷蔵2、定温2)と、冷蔵、定温庫には急激な温度変化を防ぐための前室で構成し、総面積は約1950平方メートル。従来の医薬品専用施設であるKCOLDと合わせて約2500平方メートルの規模となっている。空調設備やエアー搬送ファンを室内に満遍なく配置して、空気を循環させることで温度ムラを解消させているほか、冷蔵、定温の前室にはそれぞれ、トラック後部を直接ドックインできるエアシェルターを整備し、外気に触れることなく貨物の搬出入が可能。
新施設の稼働もあり、同社の24年度の医薬品の取り扱いは、対前年度で倍以上に増加。特に2〜8度帯の保管の引き合いが増えているほか、マイナス60度以下の超低温の保管が必要となるバイオ医薬品のニーズも増加傾向にあるという。また、成田空港での航空輸送の案件に加えて、東京港・横浜港の海上輸送向けの医薬品専用庫としての活用も進んでおり、取り扱い増の一因となっている。KMedicalでは海上コンテナをそのままドックインすることができるため、温度変化なくコンテナ後部から積付・荷卸できるなどのメリットがあり、好評を得ているという。
そのほか、国際航空貨物輸送のセキュリティ確保と物流円滑化を目的とするノウンシッパー(特定荷主=KS)/レギュレーテッドエージェント(特定航空貨物利用運送事業者など=RA)制度の要件変更による、爆発物検査の厳格化への対応も進めている。3月から爆発物検査の対象がカートン単位に拡大したことについては、同支店では人員を10人増員して作業負担の増加に対応。来年1月からは貨物の「中身」の安全確認まで求められるが、同社ではX線検査装置を複数台導入し、医薬品専用施設内にも配備する。中身検査の実施にあたっては、温度管理が必要な医薬品は品質面への影響が懸念されているが、専用施設内で検査を行える体制を整えることで、温度逸脱などのリスクを軽減する狙いだ。
写真キャプション
成田ロジスティクス支店に導入した医薬品専用車両